釧路公立大学

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令和6年度入学式 学長告辞

令和6年度入学式 学長告辞

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令和6年4月8日、本学アトリウムを会場に「令和6年度釧路公立大学入学式」が執り行われました。
以下、本学学長の告辞文を掲載いたします。
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 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。また、新入生のご両親をはじめご親族のみなさま、すべての関係者の皆様に対して、釧路公立大学教職員とともに、心よりお祝いを申し上げます。また、ご来賓の方々におかれましては、新入生の晴れの日に私どもとともにご列席いただき、誠にありがとうございます。

 本学は、1988年(昭和63年)に、釧路管内の全市町村が協力し合い、住民の理解と協力を得ながら、さまざまなハードルを乗り越えて作りあげられた大学です。以後、海外の大学との姉妹校提携や学術交流、経営学科の新設、地域経済研究センターの設立など、着実に質向上を成し遂げてきました。昨年からは公立大学法人となって、さらなる改革に取り組んでいます。この歴史は、フロンティア・スピリット溢れる北海道の伝統を受け継いだものであり、それは「地方創生」を自治体間の協同によって実現した先進的な事例の一つとして、今に生きる私たちが学ぶべき原点となっています。
この「地方創生」というテーマは、新入生の皆さんとも無縁のものではありません。皆さんの先輩方、そして皆さん自身の出身地は、それぞれ独自の特徴を有しています。気候などの自然条件を一つとりあげても、北海道では、道北、道央、道南、そして釧路のある道東で違いがあり、そのことが地場産業の形成と発展に影響を与えてきました。近年増加傾向にある道外からの入学者(今年度は約43%)は、北は青森から南は沖縄からも来ていますから、地域差は多岐に及んでいます。ゆえに、「地方創生」や「地域活性化」といっても、その条件や方法は異なります。
現実は多様ですので、さまざまな「地方創生」の処方箋が必要になりそうですが、皆さんは焦る必要はありません。大学で学ぶ事柄は、やや抽象度の高いものが多いです。その学びで物事の本質や原理をつかむことができれば、多様で複雑な現象の理解にきっと役に立つはずです。昨今は、なんでも手っ取り早く「正解」を獲得しようとする流れ(例:チャットGPTなど)が見受けられますが、万能で唯一無二の答えは存在しません。共通テストでは、点数をとるために「正解」が求められるので、受験生はそのパターンに取りつかれがちです。ところが大学に入ると、先生から「答えは多様である」といわれるので皆さんは混乱するかも知れません。しかし、大学は、「すべては疑いうる世界」、「様々な答えを受け入れてくれる世界」です。皆さんの意志と行動力で、大学はいくらでも自由に発言できる場となるはずです。
自由に考え、行動する、という道筋は、本学の入学試験や、この春から実施されるカリキュラムにも反映されています。ご承知の通り、本学の入試では「学部一括入試」が採用されるようになりました。そして、入学後の1年次には基礎的な教育を受けたのちに、2年進級時に経済学科か、経営学科を選択することになります。さらに、経済学科の場合には経済コースと地域社会コースを、経営学科の場合は経営コースを選ぶことになります。学科やコースの決定には、1年次の成績が関係しますので、皆さんの問題関心の絞り込みや興味ある分野での主体的で積極的な学習に期待しております。
つぎに、新入生の皆さんが、これから学生生活を始めるにあたり、実践してもらいたいことについてお話します。
先ほど申し上げたように、大学では、「覚える」だけでなく「考える」というプロセスを重視してほしいと思います。高校までは、どちらかというと暗記型の学習が多かったことでしょう。私の高校時代もそうでした。目標は、大学受験。「ただ一つの正しい答え」を導こうと、必死で解法のテクニックや専門用語を頭に詰め込んでいました。しかし、そのようにして得た知識の多くは、受験後に、いとも簡単に忘れてしまいました。
私の体験談の続きですが、例えば、皆さんがこれから生活することになる「釧路」(くしろ)という地名は、小学校の社会科の時間にも登場します。あの二つの漢字の組み合わせで、「くしろ」と読むことを学んだ時は、難しいことを覚えられた気がして嬉しくなったものです。しかし、それで「釧路」の何が分かったのでしょう?中学・高校では、「湿原」とか、「霧」とか、「日本有数の漁港」、「根釧台地」、「酪農」、「パイロットファーム」といった言葉も教科書に出てきて、ぼんやりと「釧路」のイメージが湧いてきたことを思い出します。とはいえ、繰り返しになりますが「釧路」の何が分かったのでしょう。学校のテストでは、いまキーワードにあげた言葉を穴埋めすることができれば、点数がとれる、という勉強でしたから、それ以上の関心は浮かんでこないし、ほかに覚えなければいけないことがあるから、「釧路」に関する考察はそこで中断してしまいました。
では、大学では、どのようにして学んでいけば良いのでしょう?最初に結論を申し上げますと、まずは高校までに学んできた言葉を、社会のさまざまな問題と関連付けて深堀してほしいと思っています。
私の場合、自分が育った町のことを、好奇心をもって客観的に見つめたいと思ったのは、だいぶ大人になってからのことでした。そして、その町は、どんどん人が減り、賑わいがなくなり、中心市街地が空洞化しているといわれるようになりました。「過疎化」は今も進行中で、20年ほど前からは「限界集落」、「村がなくなる」といったことが現実のものとなりました。都会には益々人口が集中し、田舎は置き去りされてきました。おそらく皆さんの出身地の多くでも、同様のことが起きているに違いありません。そうした状況を変えようとしているのが、現在の私達です。少し前までは、成長神話に則った量的な側面からの地域振興が主流だったと思います。今後は、さまざまな技術の力を借りながら働き方や生活の質を改善し、暮らしやすい地域社会の創出が追求されていくように思います。新しい社会の未来像を考える人々の輪の中に皆さんが参加してくれることを願っています。
もう一つ皆さんに求めたいことは、これまでと同様に、家族や学校の友人を大切にすること、さらにその外側の社会に生きる人々との関係を作ることです。大学という場は、「誰かに守られていた自分」から、成人して「自由になった自分」が、いろいろなことにチャレンジし始める人生のステージです。社会人になる一歩手前で、自由の裏側にある社会的な責任も、皆さんが身をもって感じる機会が増えてくることと思います。それもまた学びの一つです。
本日、この会場の、皆さんの左手にいる先生方、そして右手奥にある事務局の職員の方々、そして、皆さんの先輩たちが皆さんの学びと学生生活をサポートしてくれます。こちらからも声をかけますので、皆さんのほうからも、どんどん話しかけてくれることを望みます。
最後に、新入生の皆さんに、学びの上での三つの課題をあげておきましょう。
一つ目は、「総合知」の獲得です。聞きなれない言葉でしょうが、本学の専門領域である社会科学は、人文学や自然科学と結びつきながら築かれてきたものです。1~2年次には、本学での学びの基礎力を得るために必要な科目が用意されていますので、多角的・複合的に学び、考え、行動する自分を鍛えましょう。
二つ目は、日本の社会や文化のみならず、外国語や異文化への理解を通じてコミュニケーションの幅を広げることを勧めます。「他者を知る」ということは、自分を高めていくための通過点です。コロナ禍によって内向きになった心を開放し、家庭から地域社会へ、さらに国内から海外へと視野を広げることで、自分のなかに複眼的で多面的なものの見方や考え方を育てましょう。
三つ目は、「理論と実践の統一」です。これもまた大学では頻繁に聞かれる言葉です。両者を結びつける紐帯は、好奇心と行動力、人と人とのつながりです。実際には、どちらかに偏りがちになることが常ですが、立ち返るべき原点として忘れずにいることが肝心です。
 以上、こちらからの注文ばかりでしたが、皆さんが入学時に抱いている期待、目標が何よりも大事なものです。それを失うことなく、4年間を全うしていただきたいと願っています。皆さんの大学生活が実り多きものになることを祈念して、告辞といたします。
 
             令和6年4月8日
 
       釧路公立大学 学長 白川 欽哉
 

最終更新日:2024年04月08日