令和6年度釧路公立大学学位記授与式 学長告辞
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令和6年度釧路公立大学学位記授与式 学長告辞

学長告辞の様子
2025年(令和7年)3月23日、本学アトリウムを会場に「令和6年度釧路公立大学学位記授与式」が執り行われました。以下、学長の告辞文を掲載いたします。
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ご卒業、おめでとうございます。釧路公立大学の教職員の代表の一人として、心からお祝いを申し上げます。また、この日に至るまで、長い年月にわたって、皆さんの成長を、支えてこられたご家族と関係者の皆様に、敬意と感謝の意を表したいと存じます。
覚えていらっしゃるでしょうか、皆さんが入学された2021年(令和3年)は、まだコロナ禍のなかにありました。高校時代からさまざまな制約・制限のなかで学んでこられた皆さんには、大学に入学したのちに待ち受けている学びの環境に期待と不安が入り混じった状態で、(このアトリウムではなく、皆さんもご存知の)体育館に集まっていただきました。
当時の希望や目標はどこまで達成できたでしょう?大学生としての教養を身につけ、社会人に相応しい見識を備え、経済学や経営学の基本的知識や専門的な応用知識を学びたい、地域貢献に必要な知識や経験を獲得したい、など様々な思いを抱いていたことでしょう。まだ見ぬ同窓生との出会いにも期待を寄せていたかも知れません。他方で、目標が定まらず、漠然とした気持ちで大学に入学してしまった、一人暮らしが不安だ、友達ができるだろうか、という気持ちで入学式に臨んだ方もいたに違いありません。
その後、この大学で学び、いま現在の気持ちはどうでしょうか?完全燃焼した、不完全燃焼だったけれどなんとか満足できる4年間だったという方も、悔いが残る、という方も、もう終わってしまったの、と残念がる方も、入学当時を振り返り、その当時の目標と今現在の到達点との比較をしてみてほしいと思います。
わたしの教員としての経験で、卒業時の学生たちとの会話でよく聞かれるのは、最初は不本意だったけれども、結局は充実した4年間だった、という声です。満足度の高さ低さは、一人ひとり違うけれども、幸いにも「ひどい大学生活だった」という感想を聞いたことはありません。
実はこの結論、教員の側からすると、皆さんに関するつぎのような印象の裏返しでもあります。(あくまでも私個人の見方ですが)「一年の頃は、やや幼さが残る学生たちが、3年までに力をつけ、4年生になり就職活動が終わるころには、社会人候補生としての立ち居振る舞いとコミュニケーション力を持つようになる」というのが、わたしの個人的な感想です。皆さんの大学生活が「ひどかった」とは到底思えません。皆さんはわずか4年間の間に急速に成長できるのです。そのことは、私たちに少しばかり自信を与えてくれるものでもあります。
さて、話はここで終わるわけではありません。大学という一つのステージを終えた皆さんには、新しい課題が待ち受けています。それは、大学という半ば「護られた空間」から、皆さんが大学で学んだ「社会」の「現実を生きる」ということです。アルバイトは、その疑似体験の場であったでしょうが、これから皆さんが働くことになる「組織」(会社、自治体、公共機関など)において、まずは一つひとつの仕事の責任の重さが違ってきます。野球やサッカーなどスポーツ、吹奏楽やダンス、ゼミナール報告のグループなどでの一個一個のポジションになぞらえてみるとわかるはずです。それを社会科学では大なり小なり「分業」と呼び、それがうまく機能すると思わぬ成果につながることがあります。期せずして優勝してしまった、というときは、「組織」が、「分業」がうまく機能するように一人ひとりが責任をもち、連携を取りながら仕事をしたからでしょう。大学時代の経験と知識を、引っ込み思案にならず、意識して、積極的に発揮してほしいと思います。
社会人になった皆さんの前には、個々の「仕事」だけではなく、少子高齢化、環境問題、地方創生、食糧安全保障、経済成長の鈍化、戦争と平和など、数多くの社会的な課題が控えています。私たち全員がその課題と向き合っているわけですが、課題解決を今後も継承していくためには若者の力が必要とされています。テクノロジーやデジタルメディアを活用した新しいビジネスや、環境に優しいライフスタイルや、多様性を承認し合う社会の実現などには、古い価値観や発想を単純に捨て去るのではなく、それらの組み換えや掛合わせによって新しいものを生んでいくことが必要です。子供が親を乗り越えていく過程によく似ていますね。ぜひ私たち祖父母、親世代の常識を変える社会人になってほしいと思います。
そのためにも挑戦を恐れずに今後を生きて下さい。新しい環境や未知の世界に飛び込むことは勇気がいることですが、その先には成長と学びがあります。皆さんは、大学時代にちゃんとステップアップできたのですから、失敗を恐れず、さらなるチャレンジを続けて下さい。
最後に、この釧路、そして釧路公立大学で出会った人々のこと、ここで学んだ知識と経験を思い出し、今後の成長の糧にしていただければと思います。皆さんの今後の成功と何よりも健康を祈って告辞とさせていただきます。
2025年(令和7年)3月23日
釧路公立大学 学長 白川欽哉
釧路公立大学 学長 白川欽哉