釧路公立大学

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令和3年度釧路公立大学学位記授与式 学長告辞

令和3年度釧路公立大学学位記授与式 学長告辞

学長告辞の様子
学位記授与式の様子
2022年(令和4年)3月23日、本学体育館を会場に「令和3年度釧路公立大学学位記授与式」が執り行われました。以下、学長の告辞文を掲載いたします。
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 卒業、おめでとうございます。釧路公立大学の教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。また、この日に至るまで長い年月にわたって、皆さんの成長を支えてこられた、ご家族と関係者の皆様にも、心から敬意と感謝の意を表します。
 
 現代は転形期と言われます。それは、日本の転形期に留まらず、世界が転形期にさしかかっているという意味でしょう。日本は明治維新以降、富国強兵のスローガンのもと、国民国家の形成に邁進しました。一度手酷い挫折を経験しましたが、昭和20年以降、その再建に取り組んできました。近代化、産業化、都市化、戦後はこれに市民社会化が加わったように思います。今、私たちが手にした社会は、国民国家としては大いに成功したと評価されるのではないでしょうか。しかしそれは他方で、地域社会と地域文化の衰退という大きな代償を払ってしまったようにも見えます。
 世界を見渡せば、国民国家の形成に苦しんでいる国が多く見られます。アフリカの諸国や西アジアの諸国は、西欧の列強によって、民族を分断して分割され、分断されたまま国家の形成を強いられました。国民国家という近代の発明品が、少数民族の迫害や国内における民族対立を先鋭化させています。それは過渡期の現象なのか、これからも絶えることのない紛争が続いていくのか、判断のつかない混迷した状態が続いています。それが、私たちの心を覆い、そのあまりの悲惨さに、接し続けていることが、私たちの生活にも大きな影響を与えているように思います。
 新型コロナウィルスのパンディミックは、時代の転形期に発生した問題です。それは、我々にどのような姿勢や思考を強いているのでしょうか。自由な行動を規制しなければ逆に自由を維持することができないという社会契約論が発見した知見から、国家の役割が再認識されることになるのでしょうか。逆に、国家の形成とともに始まった産業化の際限のない拡張がもたらした結果として、国家の役割は、相対化されるのでしょうか。都市への人口集中が反省され、地方への分散が進むことになるのでしょうか。時代はまさに逆向きの要素が牽制しあう混沌とした転形期にあると言えます。
 
 さて、大学は開学して35年を迎えようとしています。草創期の16年、安定期の16年を終えて、新しい段階に入らなければならない時期を迎えたようです。機構改革としては、大学の法人化も目前に迫っています。しかし、何よりも、学びの質を改善していくことが重要です。地域で学び、地域を学ぶを、深化させて行かなければなりません。
 今年度は、小さな試みですが、本学を卒業して地域の金融機関である信用金庫で働き、重要なポジションを占めるようになったOBの方を本学に招いて、第一回の地域経済・金融フォーラムを開催することができました。OBだけではないのですが、多くの地域の動向に関心のある方に集まって頂きました。融資に結びつけるために、如何に地域の中小企業に寄り添い、経営の将来展望を経営者と共有して事業を構想できるかなど、地域金融の最前線の話を発表してくれました。その自信に満ちた姿は、多くの後輩に感銘を与えたものと思います。OBの方々も、母校の学生の前で、教壇に立ち、自分の仕事を話す機会を与えてもらったことに、感慨深そうでした。
 学生が発表する部もありました。3年生が中心でしたが、4年生が発表したゼミもありました。大学の新しい一歩を、皆さんに担って頂いたことが、長く大学の歴史に残るように、これから歴史を作っていかなければなりません。歴史は、それを継承し、発展させてくれる後輩がいて、形成されるものです。主要な産業が衰退し、転換期にあるこの地域において、そして、この釧路公立大学において、思いを同じくして課題に向き合ったという経験が、大学の伝統に昇華されていくこと、そして、皆さんの人生という物語の、重要な一駒になることを期待します。
 
 転形期を生きるとは、古いものと新しいものを両方ながら抱えて生きることです。古いもの、古くなりつつあるものとは何でしょうか。新しいもの、新しく立ち現れつつあるものとは何でしょうか。古くなりつつあるものとは、これまで新しいといわれてきたもの、すなわち、近代化という言葉で行われてきたものの総体でしょう。新しいものとは、その近代化によって、古いものとして否定的に扱われてきたもの、農村、農村的共同体、地方の文化、産業では農業などの第1次産業でしょう。それは、古いものがそのまま復活するのではなく、新しい工夫を凝らした形で復活するということです。
 1つの価値観にしばられない柔軟な精神を持ち続けなければなりません。人は柔軟さを、どのように保てるのでしょうか。相手の立場を考慮することが柔軟さに繋がっていることは言うまでもありません。自己の心のなかに、自分と相手が共存していると表現することも可能です。古いものと新しいもの、合理的な精神と感性的精神、我と汝、その絶え間ない応答の中で、自分が変わっていく、その変化を喜ぶ、心の有り様に目を向けていただきたいと思います。
 経済の世界は、確かに合理的な世界ですが、そうした世界が皆さんの人生全体という訳ではありません。それぞれの人生は、この世に一つしかない個性的なものです。合理的なものに全てが吸収されてしまえば、人と比較可能な序列の世界に落ちてしまします。そうならないよう、合理的な精神を包み込んだ、皆さんの感性を大事にして頂きたいと思います。悠久な自然に接した本学での4年間が、転形期を生きる皆さんの大きな支えになることを祈念して、告辞とします。
 
2022年(令和4年)3月23日
釧路公立大学 学長 小路行彦

 

最終更新日:2022年03月23日