釧路公立大学

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令和2年度 新入生に向けてのメッセージ

令和2年度 新入生に向けてのメッセージ

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 令和2年4月7日、本学アトリウムを会場に「令和2年度入学式」が執り行われる予定ではございましたが、新型コロナウイルス感染状況を踏まえ、入学式は中止とする運びとなりました。
 以下、本学学長より令和2年度 新入生に向けてのメッセージを掲載いたします。
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新入生のみなさん、入学おめでとうございます。また、ご家族や関係者のみなさまにも、教職員一同こころよりお祝い申し上げます。

 釧路公立大学は、昭和63年の創設以来、「地域に結びつき開かれた大学」、「国際性を重視する大学」、「理論と実践の相まった大学」を建学の理念に掲げ、教育と研究を始めました。もう30年を超える歴史を歩んできました。
 昭和63年といえば、その翌年にはベルリンの壁崩壊を契機に、社会主義体制が崩壊し、いわゆる東側世界が世界市場に組み込まれた歴史の大転換期でした。経済のグローバリゼーションは、新たな段階に進んだわけです。東側世界が競争に参加することになって、安い労働コストを求めるグローバル資本は生産地をどんどん東側世界に移していき、アメリカや日本の先進国では、産業の空洞化が進み、雇用は喪失し、賃金も切り下げざるを得なくなりました。この結果、世界的な富の変動と国内での富の変動をもたらしました。地方の衰退や格差社会の到来は、この影響でもあるのです。
 釧路公立大学は、この時代の荒波に抗するべく運命づけられているようです。地域社会の再生に貢献すること、これを担う人材を育成することが、本学の重要な使命となっているといえるでしょう。
 
 さて、新入生のみなさんが、この釧路公立大学で学生生活をはじめるに際して、心得て欲しいことをお話します。
 1つは、地域のみなさんが、みなさんの成長を温かく見守っていることを忘れないで頂きたいということです。
 釧路公立大学は、32年前に当時の1市10町村が、自らの力で、その気概と実行力で作りあげた大学です。この歴史は、本学の大切な伝統となっていると同時に、地域の誇りにもなっています。みなさんの成長は、みなさんだけのものではありません。ご家族の関心事であるばかりか、この大学を作った地域の人々の関心事でもあるのです。
 開学して32年、本学を卒業してこの地域で就職をし、様々な職場で活躍されている卒業生もたくさんいます。釧路公立大学は、この地域にとってなくてはならない大学に発展してきました。それだけに、地域が本学と学生のみなさんに寄せる期待も大きなものがあります。温かい目でみなさんを迎えてくれることでしょう。その期待に甘えることなく、しっかりとその期待に応えて欲しいものです。

 2つは、逆境をむしろ力に変えて欲しいということです。
 釧路公立大学は東京から離れること900キロ、最も東に位置する大学です。中央から離れているということは、辺境に位置しているということですが、この環境をむしろ肯定的に捉えて、自分の成長の力に活かして欲しいと思います。この地で生活することが、時代の流行に取り残されると考えずに、あえて時代の流行に流されないという気概を持って、自分の興味関心を掘り下げて頂きたいものです。時代に流されないというのは、その人の才能を開花させる大前提ではないでしょうか。
 自分にどういう才能があるか、おぼろげながら分かっている人もいれば、そうでない人もいるでしょう。受験勉強で他人と比較される中で、自分を見失っている方もいるかもしれません。しかし、才能とは、特別な人を除けば、多くの場合、好きなことをずっと続けてきたということに過ぎません。ずっと続けてきたことが、自分の才能となるのです。
 それは職人の姿に似ていますが、職人が、繰り返し、繰り返し手や体を使って、技を覚えるように、みなさんも、脳という身体を、受験勉強とは違う方法で、繰り返し使うことで、使い方を覚えて欲しいものです。それは、言うまでもなく、知識を効率的に覚えるといったものではありません。自分で考えられるようになる、そのためには、社会に向き合っていなければなりません。新聞を毎日読むということも1つの方法ですし、時代と格闘した優れた古典を、何度も読み返すことも1つの方法でしょう。しかし、それ以上に有効なのは、こうした営為を長い間やってきた教員に接して、真似るように体得することでしょう。

 3つは、多様な人間関係を築いて頂きたいということです。
 大学は、教員、職員、学生からなる「知の共同体」といわれます。今日からみなさんはその一員となるわけですが、大学での人間関係の形成は少し特殊で、自由です。高校までと違って、講義を選ぶことができますから、教えてもらう先生をある範囲で選ぶことができます。大学の講義には、専門演習という教師を囲んで議論をすることを主眼とした科目があります。その演習は、学生の希望によって決まります。社会に出て働いても、職場の上司を師と仰ぐこともありますが、上司を選択することはできません。どんな上司を持つことになるかは、偶然の要素が強く、運命にも似た不公平なものでしょう。ところが、大学は、限られてはいますが、自分で師を選ぶことができるところなのです。
 師弟関係は重要です。師を持つことができた時点で、その人の学びは始まっているといわれます。自分は本当に学びたいのか、単に単位を揃えて卒業証書をもらいたいのか、その差はみなさんの成長にとって決定的です。講義や演習が、特定の知識の伝達という機能を超えて、考え方、考える姿勢を吸収することができるのは、師弟関係の機能でしょう。それがみなさんの選択に任されているわけです。それは、すばらしいことであり、また、恐ろしいことでもあります。
 この師弟関係は、先生と学生の間だけでなく、学生同士の間にも出来上がるものです。また逆に学年を進めば、みなさんが師の立場に立つことにもなります。こうした二重の師弟関係を、どれだけ持つことができたかで、その人の学びの量は決まってくるといってよいでしょう。
 日本の社会が、自由と平等を、社会の基本的原理とする先進社会でありながら、アメリカやヨーロッパの国々と異なっている点は、上下の関係である師弟関係が、働く場である職場の中にも存在している点にあります。職場が、労働を売って賃金を得るという、対等な契約関係だけで成り立っているのではなく、師弟関係という全人格的な関係が存在しているところに、日本社会の特徴、つまり強みと弱みがあるわけです。
 大学での学びに対する姿勢、学びの重層性を如何に多く経験するかが、みなさんの今後の人生を決めてくるといってよいでしょう。

 最後に、釧路が位置する道東の地は、大変、観光資源に恵まれたところです。ある著名な建築家は、道東の風景は、イギリスの田園地帯の風景にも似て大変美しいと評価しています。しかも、この美しさに加えて、道東には摩周湖や屈斜路湖などの美しい湖沼と雌阿寒岳、斜里岳、羅臼岳などの山々を持っている点で、その美しさは、イギリスの田園地帯を上まわって、世界一であると賞賛しています。
 大学の背後には釧路湿原が広がり、北を向いて顔を上げれば百名山の雌阿寒岳、阿寒富士が目に入ってきます。新釧路川は、大学の少し西の方にありますが、これを湿原に向かって遡行していくと、方向感覚を失うほど、空間の広さを体感することができます。
 21世紀は環境世紀といわれます。地球温暖化がもたらす悲劇は、弱者を中心にその非情さをまして来ました。美しい景観はみなさんに、心の安らぎを与えると同時に、人類が解決を迫られている大きな問題への関心を呼び覚ましてくれることでしょう。

 釧路公立大学は、学生のみなさんに重層的な学びの空間を提供できるように、一層力をいれていきます。世界一美しい道東の地で、4年間、悔いのない学生生活が送れるよう、みなさんにエールを送って、式辞とします。

 

令和2年4月7日

 

      釧路公立大学 学長 小路 行彦

 

最終更新日:2020年04月07日