釧路公立大学


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平成31年度入学式 学長告示

平成31年度入学式 学長告示

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平成31年4月8日、本学アトリウムを会場に「平成31年度釧路公立大学入学式」が執り行われました。
以下、本学学長の告示文を掲載いたします。
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 三四九人の新入生のみなさん、入学おめでとうございます。また、新入生のご両親をはじめご家族のみなさま、とりわけ関係の深い方々にも、ご来賓のみなさまや釧路公立大学教職員とともに、心よりお祝いを申し上げます。

 

まずはじめに、私は、みなさんがそれぞれの仕方でご自分の将来について考え、それこそ縁もゆかりもない釧路のこの大学にいらっしゃるということに敬意を表したいと思います。自分がどんな場所で、どんな生活をしながら、どんな勉強をするのかといった問題は高校までの生活では出会ったことのない問題ですから、いろいろと考えあぐねたことと思います。

みなさん、よく、途中で立ち止まってしまわずに、前に進んでくれました。

そうした、敬意を表したうえで、わたしは、みなさんにこのタイミングで、自分のこれまでを振り返ってみることをお勧めします。

私事ですが、昨年、初めての孫が生まれました。第一報を聞いたとき、新しい命がこの世に誕生したということにひどく感動し、手帳に大きく娘の名前と「よくやった」と書きました。そのあと、ことあるごとに、自分が子育てをしたときことを懐かしく思い出しています。

 その中で、私の父や母、まわりの人たちが私のどう見ていてくれたかを思うようになりました。

それを言葉にすれば、元気で育ってほしい。いつも楽しくしていてほしい。自分がやりたいと思うことをやってほしい。しっかりした人になってほしい。そして、必要なときはいつでも自分たちを頼りにしてほしい。ということになるでしょう。何だか涙が出てきそうです。

 「無償の愛」という言葉がありますが、ほんとうに、まわりの大人、とくに親の愛情はその通りのものだと思います。

 みなさんのご両親もきっと、同じ思いで君たちを見守っていたはずです。もちろんまわりにいた多くの人たちの思いも同じだったでしょう。そうした思いに包まれて、今のきみたちがあり、この場にいるということをしっかり確認しておきましょう。

自分の過去を振り返るときに、自分の目線からだけ見てしまわないようにしましょう。ということになるでしょうか。こうして、自分のこれまでを確認することは、これからの四年間に向かうさいに、大きな支えになるはずです。

 

さて、ここからは、そんな自分が出会うことになる大学生活のことを考えておきましょう。これからみなさんは、新たな人間関係の中で、知人、友人を作りながら生きていきます。人間関係はもちろん、炊事・掃除・洗濯も初めてという人もいるかもしれません。もちろん、勉強も忘れてはなりません。こうした新しい生活は、大きな旅行や、冒険にたとえてもいいと思えます。大いに楽しんでください。

 

さて、みなさんは、そんな楽しそうな四年間をどんなものにしたいでしょうか。おそらく、君たちの思いも、親御さんの思いも、わたしたち教員、事務職員の思いも、ほとんど同じだと思います。それは、この四年間で、しっかりとした人になって、社会に出たい、出てほしいということになるはずです。

では、しっかりとした人、言葉を換えて、ちゃんとした人、もっとレベルを上げれば立派な人といってもよいでしょうが、それはどんな人でしょうか。

たくさんの知識を蓄えた人でしょうか、資格試験に合格した人でしょうか、成績が良かった人でしょうか。それを考えるために、これまでに自分が出会った立派な人、例えば立派な先生を思い浮かべてみましょう。

 

私が「立派な先生」と言った瞬間に、みなさんの心にはこれまでに出会った、しっかりした、ちゃんとした、立派な先生が一人や二人浮かんでいるかもしれません。私も、今は教師をしていますが、昔は学生でしたから、立派な先生のイメージは持っています。

 では、あらためて、立派な先生とはどんな人でしょう。教員免許を持って授業している先生のことでしょうか。きみたちの誰一人として、そんなことでは満足しないでしょう。きっとたくさんの条件が加わると思います。難しいことを分かりやすく、ていねいに説明できる。えこひいきしない。生徒が自分ではうまく言葉にできない気持ちもきちんと理解してくれる。そしてアドヴァイスしてくれる。などというかなり高度な要求も出るかもしれません。

いま挙げた条件や要求をよく見ると、「立派な教師」とは自分が相手をしている学生のことをよく理解し、その学生のために自分の能力を活かしている先生というように、まとめられると、私は思います。

「教師」にこだわってしまいましたが、何でもいいのです。公務員、会社員、銀行員、農家の人、魚屋さん、で立派な人は、自分が相手にする人や自分が扱う物をしっかり理解して、自分の能力を発揮している人と言えると思います。

 

ところで、みなさんの中には、そんな立派さは実際に仕事についてから経験して身についていくんだ、と考えている人がいるかもしれません。だから大学では例えば教員資格をとればいい、要領よく試験に受かればいい、極端に言えば、大学とは単位を要領よくとって卒業さえすればいいんだ。と思い込んでいる人がいるかもしれません。立派さなんて自然に身に付くものだという考えです。

 でも私は、それはとても大きな勘違いで、そんな考え方をしていては一生、「立派になるチャンスを逃し続けることになると思っています。

その上、私は本当のチャンスは、とりわけこの四年間にこそあり、しかもこれが多くの人にとってのラストチャンスだとすら思っています。

ここからは、そのチャンスの話です。みなさんが四月から勉強を始めると、あるいはクラブ活動、バイトでもいいです、何かを始めると、間違いなく困難が現れるはずです。これまでとは異なる学習スタイル、学習内容、なじみのない人間関係、生活技術、にとまどってしまうわけです。もちろん壁や困難は様々な形で次々に現れます。それこそが「立派になるチャンスなのです」。

 壁があらわれたときに、すでに身に着けている勉強の仕方、人間関係での振る舞い方、簡単に言うと、今までのやり方に逃げ込んでしまわずに、自分の工夫と努力でその壁を乗り越えるようにしてください。

それがうまくいったときに、どんな気持ちになるかを想像してみましょう。似たようなことは、幼い頃にテレビゲームを始めたばかりのころや、掛け算を覚え始めたころ、友達とけんかしてしまったときにもありましたね。あれと同じです。

 うまくいったとき、心の中には、もちろん乗り越えた壁を見ながら、「ああ乗り越えられてよかった」という喜びが湧いています。でもそのときの自分の心の中をもう少しよく見ましょう。そこに、問題が解けるようになった自分、一段階成長した自分がいることに気づくはずです。

 問題や困難を乗り越えるたびに感じる、「自分が成長している」という手ごたえは、みなさんが自分で獲得した「幸福」なのです。これが幸福というものの具体的な姿だとさえいえるでしょう。

 大昔に、アリストテレスという人が、「人は、自分の可能性を発揮できた時、幸福である」と書きましたが、それはこのことなのです。

 この幸福が、他人の文章を丸写しにしたり、カンニングすることによって、レポートや試験を切り抜けたと喜ぶ人に、絶対におとづれないことはいうまでもありません。

この幸福を大切に思えるか否かで人は大きく分かれるものです。残念ながら、この幸福をほとんど味わえないままのひとも存在するのです。


 さきほど、私はこの四年間がラストチャンスと言いました。それについてもお話ししておきます。大学は、みなさんが、いろいろ失敗することを歓迎する最後の場所だからです。日本の教育は、よく「横並び教育」と評されますが、みなさんがすでに体験されたように、そこでは人はつねに周りの生徒と比較され続けています。でも大学は皆さんの行動や、学力をまわりと比較して眺めることをしません。ひとりひとりの独立した人格としてみるのです。あいつは、ほかの子に比べて遅れてる、とか失敗ばかりしているというとらえ方はしない、ということです。

みなさんには、いろいろの失敗が許される学生時代に、自分の工夫で困難を乗り越え、成長する幸福を味わってほしいものです。

 この幸福を一度味わってしまうと、人はむしろ進んで、困難や難しい問題に立ち向かい、工夫をしてみたくなります。もう大学の授業や試験範囲で求められる範囲をこえてしまうかもしれません。

 ここまでくれば、自分のちからで「立派な」とか「しっかりした」という形容詞がつけられる人間への歩みを始めたといえるでしょう。

みなさん、釧路公立大学にいる4年間の間に、「成長する喜びを実感できる」幸福な人間になってください、そして「立派な人間になるきっかけ」をみつけてください。

最後の最後に、私が大学時代に出会った、尊敬するゼミの先生にきつく叱られたときの言葉を紹介します。それは、「きみ、それをやったら自分がよくなると分かっているのにやらないのはどういうことだ。それではただの臆病者だよ。」というものです。

 この、なんとも恐ろしい言葉を告示の結びとすることにします。

 

 

平成31年4月8日

 

      釧路公立大学 学長 髙野 敏行

 

最終更新日:2019年04月08日